はじめに:家具修理ブログを始めた理由
みなさん、こんにちは。
家具クリニック店主の矢野です。
家具修理の専門家として、家具修理検討中のお客様の不安や疑問を少しでも解消するため、ブログを始めることにしました。毎日10件前後のお問い合わせをいただき、皆様の疑問、質問にお答えしています。そのリアルな情報を、できる範囲で皆様にご提供してまいります。家具修理ご検討の一助になれば幸いです。
家具修理を検討する理由(よくあるお客様の声)
さて、今回のテーマは、「家具修理検討の理由」
ご事情は人それぞれですが、よくお聞きするお言葉を挙げてげてみますね。
- いい家具の「はず」だから捨てるにはもったいない
- 愛着があって捨てられない
- お亡くなりになったご親族が大切にしていたものだから面影を無くしたくない。
- 新しく家具を買うのが面倒で、探しに行くのもおっくうだ。
- 新しく家具を買って失敗したくない。
では、今日はまず『①いい家具の「はず」だから捨てるにはもったいない』についてお話してみたいと思います。
「いい家具のはず」——その“はず”が重要なポイント
家具に限らず、例えば家電でも、お客様もどこかで「修理するよりも買い替えた方が安い」ということを、経験則で何となく思ってらっしゃいます。
しかし、
- 「結婚の時に親に持たせてもらった」
- 「家を建てた時にモデルハウスで展示されている家具だったから高価なのでは?」
- 「新築の時に百貨店で買った」
- 「家具店で買った時に『一生ものの家具ですよ』と言われた」
- 「旅行に行った時に、家具職人さんの工房でオーダーして買った」
このあたりがよくお聞きするTOP5です。
買い替えよりも修理を悩む理由
やはり家具に不具合が発生したり、クッションがへたってしまって不快になったりした時に、「家具を買い替えるのか、それとも修理するのか」をとても悩まれているのです。買い替えるのはそれほど難しくありません。インターネットやchatGPTに聞いても良いし、CMで見る量販店に行っても良い。買い替えるために集められる情報はたくさんありますし、また現物も見ることができる。
しかし一方、修理はそうはいきません。コンビニやホームセンターやドラッグストアのように『家具の修理屋さん』としてわかりやすいお店がたくさんあるわけではありません。インターネットで探しても、どの業者さんが、お手頃価格で、品質も良く、きちんと対応してくれて、安心して満足のいくサービスが受けられるのか、判断することは難しいからです。
よくあるお客様の困りごと
そうなると多くのお客様はその家具を買ったお店や、家具に張ってあるラベルを見てそのメーカーに直接連絡を試みられます。ここで問題が発生します。ここでお客様の声をいくつか挙げてみます。
「買ったお店に連絡しようと思ったけど廃業されてて無くなってしまっている。」
「買ったお店に尋ねたら『一生ものの家具で修理できるとは言いましたが、内で修理できるとは言っていません』と言われた』←これが一番ひどい。。。。
「百貨店さんに尋ねたら『メーカーが廃業してしまって修理ができません』と言われた」←これは仕方がない部分もあり、理解ができる。
「メーカーに連絡入れたら、渋々『修理は出来ますが、完了までに3ヶ月以上かかります』と言われた」←3ヶ月も家具が無くて不便だよね、という優しさがメーカーには欠けている。直接お客様と触れ合っていないから、自分たち都合で考えていたり、製造の片手間でやっているから、面倒な仕事を仕方なくやっているという意識が強い。
「いい家具のはず」の裏にある本当の気持ち
ここで最初のお話に戻ります。「はず」というのは、家具の購入に比べて、自分が持っている家具が、価値のあるものかの情報がうまく集めることができず、どうするのが良いのか、が分からないし、判断に困っている、ということなのです。
いい家具の「はず」の裏側にあるお気持ちは、
- 「両親に言われてきたように本当に価値があるものなのか知りたい」
- 「もし価値があるとすれば、処分をしてリーズナブルなものを買ってしまったら、後々公開するかもしれない。。。。」
- 「いい家具であるなら修理も高額になりそうだから怖いな。。。」
- 「そもそもいい家具の基準が分からない」
こうした気持ちで何年も悩まれています。
「いい家具」とは何か? 私の考える基準
私が、メールやお電話、LINEなどで連絡をいただく大半はこのような悩みを抱えられた方々です。
そこで私が最初にお話しさせていただくのは、
「そもそもいい家具とはどんな家具なのか」
ということです。
「材質が良い家具?」「デザインがいい家具?」「値段が高い家具?」「有名ブランドの家具?」「人気の家具?」「有名店の家具?」
まさに、十人十色の「価値観」で「いい家具の定義」はバラバラなのです。有名ブランドの高級家具を使っていれば、それは羨望のまなざしを受けながら、高級車で街中を走るのと同じ高揚感と興奮かもしれません。
職人さんにわざわざオーダーして作ってもらったこだわりの家具であれば、そういう買い物をした「自分」への自己肯定感かもしれません。
私なりの「いい家具」の基準
十人十色の価値観をお持ちのそれぞれのお客様に、私なりの「基準」をお示ししています。
それは、
「いい家具とは使い慣れていて、愛着を持って大切にしている家具」
「これからも道具としてのその家具を使う用途が明確にある」
「愛着がある家具」こそ、いい家具
一つ目について
材質が良かろうが悪かろうが、値段が高かろうが安かろうが、有名ブランドだろうがノーブランドだろうが、好きなものは好き、ということです。それだけ長年使ってきたということは、それが「自分に合っている」のであり、「使い心地が悪くなかった」のであり、「そこにあって当然」だったのだと思います。どこか「夫婦」のようなのかもしれませんね(←いろんな反論やお叱りをいただくかもしれませんが 笑 無理なく自然体でずっと寄り添ってこられた、という意味でお考え下さい(;^_^A )
「使う目的がない修理」はおすすめしません
高価なものだから、直して使わないともったいない、というお気持ちもわかります。でも、どんなにいいものでも、自分の生活に合わないものはやはり愛着を持って、ヘビーユースになることはないと思いますし、置き場所にも困ることもあります。例えばスペースに限りがあるのに、お金持ちの友人からバカデカい高級ソファをもらっても、それそものは素晴らしいものかもしれませんが、自分の生活には合わないじゃないですか。ゆえに、それが二つ目の「これからも実際使っていける家具なのか」という判断基準につながってくるのです。
家具店は別の言い方で「道具商」と言います。例えば中古家具を取り扱う時に必要な、所轄警察署の生活安全課で発行していただく古物商免許の許可分野で、家具は、「道具商」と分類され、掲示するプレートにも「道具商」と記されています。道具とは「便利」に使えるものです。暮らしを豊かに快適にしてくれるためのアイテムです。その道具が、大きさが合わない、体が合わない、スペースに合わない、用途に合わない、のであれば快適に暮らすどころか、そのうち「邪魔」になってしまいます。いくら受け継いだ高級桐箪笥でも、着物を着ないのに、あっても仕方がないのです。そのうち置き場所に困って、「邪魔者」扱いになるのであれば、それは家具が可哀そうですね。
なので、私はお客様には、「使う目的がないのに、費用をかけて修理やリメイクをするのは、お金がもったいないからやめた方がいいです」とはっきりと進言いたします。もちろん、私どももお仕事をいただければ嬉しいですし、ありがたいことですし、売上にもなります。しかし、私どもがお手伝いさせていただいたお客様の、これからの暮らしがHAPPYでないのであれば、もしくはHAPPYにならない可能性があるなら、「本当にいいの?」と手綱を引くのも私どもの大切なお仕事と思っています。格好つけた言い方ですが、そこはカネではないのです。
「修理すべきか買い替えるべきか」正直にお伝えします
ある意味、私たちの仕事は、この、
「修理をするべきか買い替えるべきか、正直にお応えします」
でお仕事の90%は終わっているのです。実際の修理は、各分野の素晴らしい職人が素晴らしい品質のお仕事をしてくれます。椅子職人は食卓椅子の張り替えからソファの張り替え、部分張替や、ウレタン交換まで、木工職人は、椅子のぐらつき直しや割れた天板の接着修理、ガラス交換や、蝶番交換、箪笥のリメイクから別注家具製作まで、塗装職人は、現場出張補修や食卓天板の塗り替え再塗装やドレッサー(鏡台)の再塗装や食卓椅子の塗り替えまで、様々なご要望に、最高の技術と、思いやりでお答えしています。
おわりに
少し長くなりましたが、今日はここまで。
次回は➁愛着があって捨てられないについてお話しできればと思います。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
みなさまの暮らしが、豊かで快適になりますように。

