このブログでは、「家具でお困りの全ての方の、気持ち、判断の基準の助けになる、リアルで有用な情報」を書かせていただいています。
家具の買い替え、家具の修理、とりわけテーブルの塗り替えや椅子の張り替え、椅子のぐらつき直し、椅子の塗装、箪笥や食器棚の蝶番の修理、ソファの張り替え、ソファの座面内のクッションの入れ替え、リメイクなど、幅広い守備範囲と経験、知識、でお客様をサポートさせていただいております。
毎日10件前後のお問い合わせをいただき、皆様の疑問、質問にお答えしています。そのリアルな情報を、できる範囲で皆様にご提供してまいります。家具修理ご検討の一助になれば幸いです。
外は大分春めいてきて、名古屋では桜の開花宣言もされたとか。弊社が入居する事務所の前の公園の桜も、つぼみが膨らんできて、いよいよ春到来、といった感じで、ウキウキしますね。みなさんも春の行楽で楽しくお過ごしかと思います。
家具の修理は、こうした連休やレジャーには弱く((笑))、問い合わせは少なくて静かになります。家具の購入や修理は、どうしてもお金がかかることなので、レジャーには負けてしまいます。(;^_^A 何事も優先順位ですね。
ソファ総張替はなぜ成約率が低いのか
さて、今日はソファの総張替です。
これは弊社がお受けする修理の中でも、最も成約率の低い案件です(;^_^A
一番の理由は、量販店さんに、59,800円や89,800円などで新品ソファが販売されているので、修理はせいぜいその半額か同じ金額位か、と単純にイメージされるためかと思います。
ところがどっこい、そういう感覚のお客様からしますと、びっくり仰天するくらい高額な修理なのです(;^_^A
普段、私自身が、お電話、メール、LINE、全て回答させていただいております中で、例えばお電話での第一声は「ソファの張り替えを検討してるんだけど、だいたいなんぼくらいなん?」です。(笑) 現物も確認しなくて、写真も見ておりません(笑)
しかし何か返答はしなければならないので、こうお答えします。

現物も見ていなくてお写真も拝見しておりませんので、イメージでいいですか?




うん、もちろんいいよ。だいたいでいいねん。





一人掛け10万円から、二人掛け20万円から、三人掛け30万円から、といったイメージです。




え???ソファの張り替えってそんなするん???





そうなんです。。。。正直申しますと、10件あって、総張替で御用命いただくのは1~2件なんです。。。




そらそうよな。。。。そんなするんやったら。。。。





ですよね。施工内容は、
・お預りしたソファを全部解体し、全て剥がします。
・剥がしたそれぞれのパーツのカバーの縫製も全て切って、バラバラにします。(例えば背もたれのクッションだと、鏡面、まち、裏張り、といった感じです。)
・バラバラにしたたくさんのパーツから型を取り、生地、革等を裁断します。
・各パーツを縫製します。
・並行して、座面下のバネやベルトなどを張り替えたり補強したりします。
・本体にウレタンフォーム貼り付けていき、クッションの中のウレタンフォームも作ります。
・カバーを本体に張り込んでいきます。クッションカバーの中にウレタンフォームを仕込んでいきます。
・本体を組み立てます。組み立て終わったら底の不織布を張って完了。
という流れなのです。膨大な工程を経て張替が完了となりますので、かなりの工数がかかります。従って先ほどの概算イメージになるのです。。。。。
極論を言ってしまえば、例えば3人掛けを張り替えるとしますと、
60万円のソファを張り替えても30万円
5万円のソファを張り替えても30万円
なのです。。。。
材料と工賃はある程度はどのようなソファでも一定のイメージです。ソファは余程凝った作りをしているブランドソファなどを除きますと、多くは同じような構造体です。そうなると、結論的には、元々高額で購入されたソファでなければ、修理というのはメリットがなく、安価な量産品のソファを修理する経済合理性はないのです。。。。現金な話でとても悲しく、申し訳ないお話なのですが。。。。。。
というお話をひと通りご説明することになるのです。
思い入れと経済合理性のバランス
やはり、ソファというのは、リビングの顔であり、ご家族で団らんされたり、お客様をお迎えになって楽しんだり、住空間の中心的な役割を担ってきただけに、思い入れもひとしおのアイテムです。簡単に買換えることもできますが、やはり思い入れがあるので、修理できるならしたい、というお気持ちは痛いほどわかります。
しかし、現実的にはこの「経済合理性」という壁があるのです。
普通の方は5万円で買ったソファを30万円で直さないですよね。。。。。
実例:3万円のソファを15万円で張り替えたケース
しかし、過去には3万円で購入されたソファを15万円で張り替えた方がいらっしゃいました。
過去のブログでもご紹介いたしましたが、再度軽く。
もう20年近く前になると思います。
このお客様はご結婚の時に3万円で2人掛けのシンプルなソファを御購入になりました。
背もたれと座面と脚のみの構成で幅が1200mm程度だったかと思います。
お二人で並んで座ってTVを見るには十分なコンパクトサイズの可愛いソファでした。
結婚の時に買ったもの、という歴史と、コンパクトでどこにでもレイアウトしやすく、何より、サイズ的、構造的座りやすさがとてもお気に召されている、とのことでした。
張り替えの際には、膨大な種類の張地の中から、お好きな生地で、オーダーメイドで張り替えることができますし、ソファ内部のベルトやバネも交換や補強し、ウレタンも入れ替えるので、再利用するのは木枠と脚のみとなり、その他はオーダーソファを作るのと同じことです。
お客様は、修理と考えたら高額過ぎて諦めてしまうけど、自分の好きなオーダーソファが15万円で作れると考えたらそれは安いし、メリットですね!と得心されて御用命いただきました。
思い入れと、経済的メリットの、バランスの取れた着地点が、お客様を幸せな場所にお連れできるのだな、と私自身も勉強になった案件でした。
高額張替の実例:本革ソファのケース
一方、高額な張替も、もちろんございます。
私の記憶する中で、個人宅の張り替えで最も高額だったのは総額160万円の案件でした。これは1台ではなく、3人掛け1台、1人掛け2台の応接セットでした。
初めのお問い合わせは、応接セットのソファの黒の革の色が剥げてきているので、カラーリングできませんか?というお問い合わせでした。
出張見積だとお代もかかるので、座面のクッションを一つお持ち込みいただき、対応の可否を判断させていただくことにしました。
お持ち込みいただいたクッションを拝見し、それは素晴らしい本革で、本革の中でもかなり上質な革でしたので、一目でお持ちのソファのランクが分かるようなものでした。
私は、これはカラーリングで簡易補修するにはとてももったいないレベルのソファですので、もしお許しいただけるのであれば、いいランクの本革で、きちんと張り替えさせていただいた方がいいです。カラーリングのクオリティは、「マシ」になるだけで、仕上がり品質も良いものではありません。是非張替でご検討いただきたい、ということを御説明し、お写真もいただきました。そしてお写真で概算をお出ししました。
後日、総張替をご決断いただくことになりました。
本革ソファ張替の費用構造と相場
皆さんご存じかと思いますが、家具の本革は牛革です。仕入れた本革を広げますと、
「ああ、確かに牛ですね」という形をしています。家具用皮革は通常この牛の半身分を半裁として仕入れることになります。(食卓椅子の座面に使ったりもするため、半裁ずつの方が、需要に合わせて流通させやすいからではないかと推察しております。)


御覧の通り、首や脚の部分は使えませんし、おなか周りはしわが多く、お尻の方は傷が多いため、基本的には避けて使用します。つまりきれいなトロの部分を使用するのです。従いまして、革の枚数が必要になる、ということになります。
ソファのデザインやサイズにもよりますが、例えば3人掛けですと10枚程度使用することも珍しくありませんが通常は8枚程度が多いかと思います。
イメージですが、
本体張替工賃(ウレタン、副資材含む) 税別300,000円~
本革8枚×税別50,000円=400,000円
合計700,000円というイメージになるのです。
なので、お電話で本革ソファ張り替えるとしたらいくら位?というお問い合わせを頂いたら、70~80万円程度かと思います、という回答を即答するのです。これは上記計算式が頭の中に入っているためです。
先のお客様は
3人掛け90万円と一人掛け35万円×2台の内容でした。
デザインはシンプルながらも細部が凝っており、縫製も強度のある手間のかかる縫製が行われ、サイズも大きいため革の枚数もたくさん必要だったのです。
結果的にお客様は大変満足していただくことができ、私もとても嬉しかったことを鮮明に記憶しています。
ソファが安く販売されている理由
ではなぜソファはこうも世の中で安く売られているのでしょうか?
安いと言っても万単位のお買い物なので、決してお安いものではありませんが、これほどまでに金額に差の出るアイテムもあまりございません。
安価な量産品は、その名の通り量産によるスケールメリットが効いています。まず、基本的には東南アジアを中心とした海外産です。木枠は薄い合板で強度が低いものが多いです。ソファを持ち上げた時に軽いのはこの木枠の弱さによるものです。
座面クッションの下には、バネやベルトが入っています。例えば、ベルトが貼ってある場合、このベルトに強くテンションをかけて張り込もうものなら、ベルトを引っ張った際に木枠がたわんでしまうため、あまり強く引っ張れません。微妙に緩んだ状態で張るからクッション性が柔らかすぎて、ベルトも伸びやすく、早くへたってしまうことになります。クッションの下は下の画像のような感じです。


お安いソファはこんなに細かくベルトも入っていませんし、木枠が薄くて弱いため、引っ張ると、木枠がたわんで曲がってしまうので、強く張れません。
また、裁断もレザーや、まとめて型抜きのような感じで、一気に裁断してしまうのでローコストで、大量のパーツの切り出しもできます。
こうした多くのローコスト化の、ある意味工夫をして、59,800円のような価格を実現しています。それはそれですごいことですよね。当然私どもにはそれは出来ません。それだけの設備投資やバリューチェーンの構築も必要になりますから、今から参入して追いかける意味も、必要もありません。量産は得意なブランドに任せることです。
家具修理とサステナビリティへの考え方
ただ、修理をするメリットがない、使い捨て商品をたくさん世の中に流していくことも、果たして良いものか、といいますとやはり甚だ疑問に感じます。
有限の資源を切り出してプロダクトする訳ですから、願わくば、修理をしながら長く使われるものがもっと増えてくれることを祈るばかりです。


今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
春のレジャーを楽しんだ後、少しゆとりができたら、是非ずっと気になっていただ家具の修理もご検討くださいませ(笑)
皆様からのお問い合わせを心よりお待ち申し上げております。
それではまた。

