ご依頼の多い家具修理TOP10|➃ 食卓椅子の本体の塗り替え再塗装

このブログでは、「家具でお困りの全ての方の、心、判断の基準の助けになる、リアルで有用な情報」を書かせていただいています。

家具の買い替え、家具の修理、とりわけテーブルの塗り替えや椅子の張り替え、椅子のぐらつき直し、椅子の塗装、箪笥や食器棚の蝶番の修理、ソファの張り替え、ソファの座面内のクッションの入れ替え、リメイクなど、幅広い守備範囲と経験、知識、でお客様をサポートさせていただいております。

毎日10件前後のお問い合わせをいただき、皆様の疑問、質問にお答えしています。そのリアルな情報を、できる範囲で皆様にご提供してまいります。家具修理ご検討の一助になれば幸いです。

今日の京都はすごい勢いで雪が降っています。外は真っ白で、普段見える向こうの方にあるビルも、かすんで、全く見えません(;^_^A 今日は衆議院選挙でもありますし、日曜日ですので、お出かけの方はお気をつけて!

食卓椅子の再塗装の優先順位とよくあるご相談

さて、今日は食卓椅子の塗装についてです。食卓の天板に比べて、実は優先順位の低い修理項目ではあります。
と言いますのは、食卓の天板は、塗装が剥がれたりささくれができたりして、明らかに使用に難がある状態になるので、「直さなきゃ」という切迫感が生まれます。

椅子の座面がボロボロになったり、椅子がグラグラになったりすると、肌感として、不具合を感じることになります。
しかし、椅子のフレームの塗装の劣化については、肌に触れるわけでもなく、使用に差し障るわけでもなく、一番は「美装の問題」であるため、切迫感が生まれないのです。

その中でもよくご相談いただくのは、

  1. 背もたれのトップの部分の色剥げの補修塗装
  2. ワンちゃんが小さかった時に、ガジガジ噛んでしまった脚先の補修塗装

です。もちろん全体の塗装もよくご相談いただきますが、部分補修も意外と多いのです。

椅子がほとんど「仕上直し塗装」となる理由

先日、食卓の天板の塗装でもお伝えいたしましたが、塗装は大きく、

  • 剥離再塗装 (現状の塗膜を一旦全て剥離してから再塗装をする)
  • 仕上直し塗装 (現状の塗膜を全体研磨して足付けを行い、上から吹き重ねる)

の2種類ありましたね。

椅子はほとんどのケースは仕上直し塗装での対応になります。

デザインや構造、パーツの彫物、削り込みなど、複雑な形状で組み合わさっているため、組み合わさっている兼ね合いの部分は剥離しきれない部分があったりするので、元の塗装が中途半端に残ってしまうことがあります。

従いまして、剥離しきれなかった部分に元の塗膜が残ってしまうこともあるため、剥離した部分と元の塗膜の部分が混在して、その上から塗装しても、美しい仕上がり品質にならないことが往々にしてあるためです。

椅子の仕上直し塗装の工程と仕上がりを左右する「センス」

そうした理由から、椅子の仕上直し塗装は、深い傷や大きなへこみ、特に剥げて素地が見えている箇所をパテ埋めして研磨して面を整え、筆で色を付けて全体的に下補修を行い、その上から、わずかに濃い目の色に調色した塗料をスプレーガンで吹き付けていくのです。

この若干濃い目、というのは、やはりパテ埋めしたところは木目も出てきませんし、パテの色と家具の色は違いますし、剥げたところに筆で色を入れたところと元の家具の色とも厳密には異なるため、その濃淡を上手くぼかして、その違いをふんわり和らげてあげるために、少し色を入れて濃い目に仕上げるのです。

実はここに大きなポイントがあるのです。

私が日頃、メールやLINEでの塗装のお問い合わせて必ず返信にてお伝えしていることがあります。

塗装は、技術力や価格も大切ですが、最も大切なのはセンスです」ということ。

職人さんというのは、みんな本当に生真面目です。なるべく色の濃淡を出さず、「均一」に、きれいに塗装を仕上げなければいけない、と一生懸命均一化を目指します。

均一化を突き詰めると、色の濃淡を消すために、どんどんぼかし塗装を重ねていき、最終的には色の面影も無く、木目も薄れてほとんど見えなくなるまで、塗装を重ねてしまうのです。それ自体は責められるものではありません。『なるべく美しくしよう』、という職人の真摯な仕事の結果であり、気持ちの表れです。

実はこの『なるべく美しくしよう』の美的感覚、センスが、私が最も重要だと考えているポイントなのです。ある意味「和食」のようなものかもしれません。

例えば洋食はソース文化で、スパイスや野菜など、「足し算」型だと思います。

しかし一方、和食は「引き算」です。出汁が重要なキーで、なるべく味付けは引き算をしながら、『素材の良さを引き出す』ことが重要であり、それこそが和食の真骨頂です。

つまり塗り重ねれば塗り重ねるほど、洋食型の施工になり、こってりした仕上がりになります。

元の木目の美しさ、お客様が大切に使われてきた経年の歴史や味わい、表情を、いかにうまく残し、美しく仕上げるのか、という目標達成には、手を止める、手を引く、一定のところから「追いかけ過ぎない」という、この判断とセンスが、仕上がりを決めるのです。

均一であることが美しいのではありません。「表情があること」が美しいと思うのです。

もちろん何を美しいと思うのかは、人それぞれであり、正解はありません。

先の職人のように、濃くなっても均一であることが美しさ、というセンスも正解です。また、それを望むお客様も、もちろんいらっしゃいますし、それは正解です。

正解は一つではない、ということです。

私ども家具クリニックの正解は、先ほどの通り、わずかに修正痕が残ったとしても、それを厚化粧で覆い隠すのではなく、素地の美しさその家具の良さお客様のこれまでの歴史をいかに「味わい」として残して、また愛着をもって使い続けていただくか、が正解であり、私が最も大切にしていることなのです。

価格の目安・テーブルとの色合わせ

さて、大きくお話が逸れてしまい、申し訳ございませんでした。すぐ熱くなってしまってW

申し上げましたが、椅子は仕上直し塗装の選択がほとんどです。肘掛けがあろうが、デザインや装飾、形状が複雑であろうが、1脚あたり税別配送費別15,000円が定額です。

椅子は、テーブルとセットのものあれば、お気に入りの椅子をバラバラでお使いの方もいらっしゃいます。

椅子だけをお受けすることは稀であるため、テーブルの再塗装の際に、椅子をどうするか、を検討することになります。

そもそもセットではない椅子をお使いであれば、テーブルとの色の違いを気にすることはありません。

しかしセット物はやはり気になるところだと思います。その場合、椅子は、粗をなるべく修復して、若干ぼかすために濃い目の色に仕上げ、その色を基準にテーブルの色を寄せて、合わせにかかることになります。
メインの天板と椅子の色がある程度、バチっと合っていると、素晴らしい統一感は出るのです。

部分補修(背もたれ・脚先)の具体的な方法

先ほど挙げた、部分補修の場合はこの限りではありません。

背もたれのトップを「笠木(かさぎ)」と呼びます。笠木は往々にしてボロボロになっていることもよくあります。椅子の中でも最も手を触れる箇所であり、お客様によってはお風呂上りに使った濡れたタオルをよくかけていらっしゃることもあります。その場合は塗膜はぽろぽろと剥がれて完全に劣化していて、素地も見えて、更にその素地に水染みやカビが回っていることもあります。その場合は笠木だけ剥離して研磨してしまい、その部分だけを先に着色、染色してから、クリア塗料に若干色を入れたカラーウレタンをぼかすために吹き付けたりします。つまり部分剥離、全体仕上直しのハイブリッド塗装です。笠木や、肘掛けにこうした処理をすることがよくあります。

当然ワンちゃんがかじった脚先も、パテ埋めをして研磨した箇所も同じです。パテ埋めをした後、平滑を出すためには埋めた周りも含めて研磨する必要がありますので、プチ剥離、という感じになります。

椅子という家具の現実的な修理予算と優先順位

椅子は、道具として便利な家具というポジション以上に、デザイナーやプロダクトデザインとしての好みが膨大にあり、最も種類が多いアイテムです。他の家具はさておき、椅子にはものすごいこだわりをお持ちで、また必要以上に数をお持ちのお客様もいらっしゃいます。それだけ大切にされているアイテムですので、張り替え、ぐらつき締め直し、フレーム仕上直し塗装、とフルスペック修理を御希望になる方もたくさんいらっしゃいます。

しかし、多くの場合は優先順位が低く、他の修理のコストを積み上げた結果、フレームの塗り直しは、今回は見送ります、という方の方が多いのが現実です。

予算は大切です。私はお客様の判断として心から尊重します。全体予算の減額ポイントとして活用いただくことは良いと思います。

さて、今日もいかがでしたでしょうか。

そりゃ全てを完全に修理することができるのであればそれに越したことはありませんが、現実的な予算感、予算は大事なことです。全部をきれいにしないから悪、なんてことは一切ありません。優先順位を決めて、最終決定されることが大事だと思います。

そもそも修理をする、という選択をされること自体が、とても尊いことだと思います。愛着をもって使われてきたこと、これからもそれを大切に使おうというお気持ち、全てが素晴らしく、心から敬意を表したいと思います。そんなお気持ちに伴走して、ご満足、お喜びのためにお仕事をさせていただき、その感動の傍いられるなんて、なんて幸せなお仕事なんだろう、と日々思います。(南の島でゆっくりしたいと思うこともありますが (笑))

これからも、一人一人のお客様が大切にされてきた、一つ一つの家具に向きあい、お喜びいただけるよう、これまでの知識、経験を最大限活かして、お客様をサポートしていきたいと思います。

書き終えた今、窓の外は、更に雪が積もって一面雪化粧です。。。。今日は出かけずに引きこもります(笑)

今日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

また次回を楽しみにしていただけましたら幸いです。

それでは~。

この記事を書いた人

家具クリニック 矢野

リペアディレクター。直すが良いか、買い替えが良いか、専門家が正直にお答えします。家具を直す=心を治す。京都出身。商社・木工学校を経て現職。何はさておきお仏壇に合唱。二人の娘が”元気の源”。甘いものさえあれば生きていける。