ご依頼の多い家具修理TOP10|⑥食卓(ダイニングテーブル)、椅子(ダイニングチェア)の脚カット

このブログでは、「家具でお困りの全ての方の、気持ち、判断の基準の助けになる、リアルで有用な情報」を書かせていただいています。

家具の買い替え、家具の修理、とりわけテーブルの塗り替えや椅子の張り替え、椅子のぐらつき直し、椅子の塗装、箪笥や食器棚の蝶番の修理、ソファの張り替え、ソファの座面内のクッションの入れ替え、リメイクなど、幅広い守備範囲と経験、知識、でお客様をサポートさせていただいております。

毎日10件前後のお問い合わせをいただき、皆様の疑問、質問にお答えしています。そのリアルな情報を、できる範囲で皆様にご提供してまいります。家具修理ご検討の一助になれば幸いです。

テーブルや椅子の高さが合わないときの対処法

さて、今日はテーブルや椅子の脚カットです。

ご相談いただくタイミングは、

  • 元々使っていた食卓セットの中で、椅子だけ買い替えたら、椅子の座面高さが高すぎる
  • 食卓セットを譲り受けたけど高さが高すぎる
  • 長年使ってきた食卓セットだけど、年齢が上がって高く感じるようになった

などが、よくお聞きする背景です。

そう、以前にもお伝えしましたように、家具は「道具」ですから、暮らしを便利に快適にしてくれるもの。使いづらくなればアレンジしてあげる必要があります。

メーカーが製造する際は、人間工学に基づき、標準的とされる寸法で製作します。最大公約数をとっているということになります。

しかし、10人いれば10人、体の大きさ、体型、心地の感じ方は、それぞれ違います。最大公約数の数値で作られた椅子を、自分が使いやすいようにリメイクすることはとても大切なことだと思います。

一般的に脚は4本脚です。それはテーブルでも椅子でもそうです。
一方、組みものの脚も存在します。それぞれカットの仕方やコストは変わりますので、今からご説明してまいります。

4本脚の家具カット:正確な墨付けと技術

まず、普通の4本脚の場合です。これはテーブルでも椅子でも基本的には作業内容、方法は同じです。

まず墨付け(すみつけ)です。お客様の御指定で「○○cmカットしてほしい」とお聞きしますので、4本全ての脚を等しくカットするための作業です。

4本脚の家具カットの墨付け作業
4本脚の家具カットの墨付け作業

このようなガイドを使用して、基準面から○○mmの位置に合わせてラインを書きます。
この画像の場合は、ローチェアにしたい、というご要望でしたので、根元からカットする段取りをしていますが、墨付け作業としては同じ作業を行います。

次にカットです。

テーブルの脚などは脱着可能で、一本ずつになりますので、デザインや構造によっては、テーブルソーでカットすることはございます。

しかし、椅子は組み上げられている完成形ですので、組まれた状態で機械は通せないため、手のこで一本一本カットすることになります。

4本脚の家具の導突鋸でのカット作業
導突鋸でのカット作業

使用しているのは導突鋸(どうつきのこ)といいます。

背金(=胴)がついているため、「胴付鋸」と記される場合もあります。

なぜ職人は『導突鋸』を使うのか?

なぜ背金がついているのか?
それは、以下の理由があります。

1.高い精度でカットするため

刃が厚いと、切ったときに材料が多く削れて無くなってしまいます。
しかし導突鋸は 精密な木工(仕口加工・ホゾ加工・箱組) に使うため、

  • 切り代(しろ)を小さくする
  • 材料の歩留まりを良くする
  • 合わせ面が狂いにくくなる

といったメリットがあり、抵抗少なく精密に切る為、薄刃であることが不可欠です。

2. 背金(胴)があるため、たわみを抑えられるから

”のこ”の薄い刃は本来、

  • 曲がりやすい
  • たわみやすい

という欠点があります。

しかし 胴付鋸は背金で刃をしっかり補強しているので、
薄くしても 直進性と精度を維持できるのです。

すなわち、
背金のおかげで薄刃が実現している。
と言えます。

導突鋸

このように記載すると、「初心者でも使いやすそう」
「よく切れそうだから日曜大工でも活躍しそう」
と言う印象を受けますが、
初心者やご家庭の日曜大工ではやや不向きです。

一 のこ
二 きり
三 かんな
と言われていますが、これは使うのが難しい道具のTOP3で難しい順になります。

みなさんのイメージでは、かんなが一番難しそうに思えると思います。
のこは挽いてカットするシンプルな作業、きりは穴を開けるだけ。
言ってしまえばシンプルな作業で簡単なように思えますが、まっすぐ挽くこと、まっすぐ穴を開けることが本当に難しいのです。

技術習得の厳しさと職人の矜持

木工の世界では、髪の毛1本分ズレたらアウト!という精度を求められます。

二つの木材をつなぎ合わせる時、その合わせ面に髪の毛1本分の隙間が出たら、仕事としては却下となります。

私も木工の訓練校に行っていたころは、夢に出るくらい刃物を研ぎましたし、長~い角材を渡されて、それに5㎜ずつ墨付けをして、角材を巻くように鋸を引いて最後の切れ目がつながるよう、夢に出てくるくらい挽いて練習させられました (笑) 何百本のこを挽いたかな。。。。

(敢えてさせられたと申します)

本当にしんどい練習でしたが、そのおかげで職人の仕事を心の底からリスペクトできるようなりましたし、それを伝えたい、という気持ちになりました。それが原点になったのです。訓練校は1年間でしたが、一つ一つの課題をクリアしないと次の課題をさせてもらえませんでした。刃物が切れないと仕事ができない、ということで、1年間しかない中で、最初の半年は、刃物砥を朝から晩までさせられましたね。。。。平かんな、小かんな、台直しかんな、しらがき、毛引き、のみ10本セット。。。。。来る日も来る日も洗い場で刃物を研ぐ。。。。

余談ですが、最後の一本ののみを研ぎ終えて、何度も却下された後、先生にOKをもらい、これで次のステップに進める!と思い、水に濡れたのみを振って水切りをしたら、それが手からスポッと抜けて天井まで飛んでしまいました。床に落ちようものならまた大きく刃が欠けて一からやり直しですから、必死で素手で取りに行き、手にのみが刺さってざっくり切れて、大流血しました (笑) おかげでのみは血だらけながらも、無事で、次のステップの板削りに進ませてもらいました (笑) 

それほどまでにフラフラになりながら研いだ刃物、整えた道具が大切なもので、それを毎日手入れして使っていい仕事をする職人は本当に尊い、と思うのです。いい職人さんほど、いつでも道具がきれいで、年季が入っていて、そして何より仕事場が片付いていてきれいなんです。この後また使う、とわかっていても、一回一回きちんと片付けるんですね。道具や材料、金物などが落ちていると、品物に傷がつくからです。

そんな職人さん方と一緒に仕事をさせていただき、お客様の幸せのために毎日働ける自分は、本当に恵まれていて、幸せ者だな、とつくづく思います。

大きく話が逸れて、また熱くなってしまい、スミマセン(;^_^A

仕上げ工程と脚カットの費用目安

さて、それほど精度の高い鋸でカットしたため、カットしたところは角がピンピンに立っています。そのまま椅子を使うと角がぺりぺりとめくれてしまいますので、面取りを行います。これはペーパーで角を削って整えます。

家具の脚カットの面取り作業
脚カットの面取り作業

カットをし終えましたら、分厚い鉄板で構成されているテーブルソーの上に置いて、ガタツキのチェックをします。テーブルソーの定盤といいますが、精度の高い平面ですので、ここでガタツキが無ければキチンとカット出来たことになります。もしガタツキがわずかでもあれば、わずかに高いところを研磨してガタつかないよう調整します。

このような単体の4つ脚をカットする場合、

  • テーブル脚カット 税別10,000円前後(4本セット)
  • チェア脚カット 税別6,000円前後(4本セット)

で施工させていただいています。

組み物の脚をカットする場合

さて、次は組み物の脚の場合です。カットをする施工は同じことなのですが、一度脚自体を解体してバラバラにする必要があります。バラバラにした後、切るべきところを切って、また元のデザインになるように組み直し、接着して、プレスしますので、工程が大きく増えます。例えばこのような脚の場合です。

組み物の脚をカット

こうした脚を解体し、カットして組み直す、という一連の施工費で
税別25,000円前後(左右セット)となります。

家具に刃物を入れてカットする、というのは何だか忍びない気持ちになることもあるかもしれませんが、やはり家具は道具です。私たちの暮らしを、便利で豊かにしてくれるものであるべきです。そこは割り切って、どんどんリメイクすることは良いことだと思っています。

少し違うかもしれませんが、観葉植物ですが、私はきれいに成長するために必要とは言っても、元気に生きている植物に刃物を入れて間引いたり、必要ない枝をバッサリカットする、みたいなことが、可哀そうに思えて出来ないんですよね。。。(;^_^A

でも植物のプロの方は、髪の毛をカットするように、愛情ゆえにサクサクカットされます。「おお!すごい」とまたまた尊敬してしまいます(;^_^A 髪の毛が伸びたらカットする、という感覚なんでしょうか。。。
もし読者の方の中で、植物に詳しい方がいらっしゃったら、是非聴かせてください。

それでは今日はここまでにさせていただきます。
今日も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
また皆様とお会いできます日を、心より楽しみにしております。
ではまた次回にお会いしましょう~。
ありがとうございました。

この記事を書いた人

家具クリニック 矢野

リペアディレクター。直すが良いか、買い替えが良いか、専門家が正直にお答えします。家具を直す=心を治す。京都出身。商社・木工学校を経て現職。何はさておきお仏壇に合唱。二人の娘が”元気の源”。甘いものさえあれば生きていける。